あの安斉重男氏!カメラよりチョーク?

フタボンゴの「ある視点」にみんな釘付け!

十日町の商店街をちょっと入ると、曲がりくねった用水路に沿った路地がある。子供たちが走り回って遊ぶには絶好の場所である。ワークショップを開くには、場所選びは重要である。フタボンコの五人組みが、この場所に目を着けた理由を子供連れのお母さんが語っていた。「私も昔からここでよく遊んでたんですよ、車も通らないし、水の音が聞こえるし、道がちょっとくねってるから、なんだか面白いんですよね」

 アスファルトの路地には直径60センチほどの丸い円が飛び石のように転々と、全部で20個ほど描かれてある、この円の中にみんなで絵を描こうというワークショップである。

「この場所から見えてくるものをここに描いてください」フタボンコのメンバーが参加者に声をかけている。「手の長いとかげ!」と叫びながらチョークをアスファルトに擦り込んでいる。この男の子のここから見える風景は「とかげ!」なのである。私にはいったい何が見えてくるのか?そんなことを考えながら空を見上げると、さっきまで曇り空だったのに雲が綿菓子のように引きちぎられて、青い空が見えてきた。まづは空を地べたに描いた。空を下を向いて描いていると、水路から水の音が聞こえてきたので水面の絵を空の横に描いた。風が水路をつたって吹いてきた、するとドクダミの匂いが鼻をかすめたので、水面の横にあのドクダミの匂いを描いた。とその時、「あれー!どういうことだ!」と路地の奥から何やら聞きなれた特徴のある渋い声が聞こえてきた。カメラマンの安斉重男氏である。「日比野、ポストカード見たか?」「見ました、安斉さんありがとうございました」。安斉さんはトリエンナーレの作品を全て撮影している。美術関係者なら知らない人はいないカメラマンである。今日もフタボンゴの撮影に来たら日比野がいて、撮影の邪魔という具合であろうか?「安斉さんも描いたら?」と誘ってみる。「そうだな、描くか!」とあいなりまして、子供たちに混じってアスファルトにへばりついたという次第であります。

※8月17日号より転載 
[明後日新聞社主 日比野克彦]

 
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